尺骨神経麻痺の治療

肘部管症候群の場合は、肘を曲げるなどで肘の内側を圧迫しないことが必要です。
特に頬杖は、もっとも尺骨神経に負担をかける動作であるとされています。避けた方がよいでしょう。
また、仕事に関連して発生する尺骨管症候群の場合、それを制限することで症状を軽くすることが期待できます。
肘を安静にして、自己治癒力を高めるべく体を休めましょう。

 

尺骨神経麻痺で処方されるのは、主にロキソニンボルタレンといった非ステロイド消炎鎮痛薬です。どちらも胃潰瘍を合併することがあるため、胃薬とともに処方されます。
個人差はあるものの、全身の痛みに対して高い鎮痛作用があります。ただし副作用として胃の不快感や腹痛、食欲不振や嘔吐などを起こす可能性もあるため、不調をきたした場合には速やかに医師に相談しましょう。
また、長期服用では腎機能低下を引き起こすことがあります。慢性的に服用し続けるのは極力避けるべきでしょう。

神経再生薬としては、メチコバールという薬を処方される場合もあります。体内でタンパク質の利用を高め、神経の修復を促進させる作用を持っています。
副作用には食欲不振・嘔吐、下痢や発疹などがあるため、こちらも使用の際には注意が必要です。
薬はあくまで、人間が持っている自己治癒力の補助をするものにすぎません。頼りすぎるのは禁物です。

 

漢方薬は、氣の流れを元に体内から自身の治癒力を高めるためのもの。薬の力で治すのではなく、薬によって自身の健康状態を回復して治すという考えで扱われています。
つまり漢方薬西洋医学の医薬品に比べて即効性が薄く、効果がない場合ももちろんあります。非常に個人差が大きい薬として考えるべきでしょう。
尺骨神経麻痺に対して効果が期待出来る漢方薬は、神経痛に効くとされている以下の3つです。

 

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

血行不良の改善に効果のある漢方薬です。
生理不順や生理痛、更年期障害など女性向けの生薬で、頭痛や肩こりにもよく処方されています。

独活寄生湯(どっかつきせいとう)

関節の痛みに効果のある漢方薬です。
冷え性やむくみのある方によく処方されています。

疎経活血湯(そけいかっけつとう)
血行やリンパの流れを改善し、痛みを発散する漢方薬です。
神経痛以外にも関節痛や筋肉痛など、痛みに対して効果のある生薬です。

 

尺骨神経麻痺の場合、基本的には安静や服薬といった保存療法で治療することが可能です。
しかし骨折や脱臼といった大きな外傷がある場合や、経過観察の結果必要と判断された場合は手術を行うこともあります。
神経組織が激しく損傷している場合も、治療の選択肢として神経剥離・縫合・移植などの手術が挙げられます。

行うのは尺骨管開放術という手術で、神経の周囲を剥離することで、尺骨神経に対する圧迫を解除します。
短時間で行えて出血も少ないため、通常は外来・局所麻酔で可能な手術です。
神経組織の回復が見込めないほどの重症ケースだと、残っている腱を繋ぎ合わせる腱移行術、もしくは手首の腱を採取して移植する腱移植術によって腱組織を再建します。